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艶のある赤色の玄関扉を開けると、綺麗に並べられたスリッパを履いて中に入る。
前を歩く朋也の後姿をじっと見つめながらついていけば、20帖はあるだろうリビングダイニングへと通された。
外観と同じ白をメインした内装の部屋は、床も壁も天井も全て白で統一されていて、綺麗に整頓されている室内にはゴミ1つ落ちていない。
「ごめんね。今、百合亜は買い物に行っていて…龍司くんが来る少し前に出ていったばかりなんだ。俺が行くって言ったんだけど、俺は料理が全然だめだから何を買っていいか分からなくてね。百合亜が行くしかなくて…。百合亜が帰ってくるまで、話でもしながら待っていようよ。今お茶を出してくるから座っていて!」
「…はい、わかりました。」
困った様に苦笑する朋也が恥ずかしそうに頭をかくと、奥のシステムキッチンへと向かった。
部屋に入ると50インチはあるだろう大型テレビが視界に映る。
龍司は、テレビを囲むようにコの字で置かれた真っ赤な革のソファに腰を下ろした。
「はい、どうぞ!」
目の前のテーブルに紅茶が入った花柄のコップを置かれ、向かい合うようにして座った朋也に視線を向ける。
なにが入っているか分からない、飲めるわけないだろ…。
幾度となく久堂を潰そうと狙ってきた者達を多く見てきた龍司は一瞬目を細めると、柔らかい表情を張り付け、向かい側に座る朋也を見る。
「お気遣いいただかなくて結構なので…」
「ん?俺は気を遣ってなんかないよ?お客様をもてなす当たり前の行動をしただけ。気を遣っているのは龍司くんの方じゃない?そんな業務的な喋り方しなくてもいいのに」
「……。」
言われなくてもそんな事は分かっている。
でも、おれはあんたとは絶対に仲良くはなれない気がするんだよ
多分こいつは悪いやつではないとは思う。
心優しく、勘の鋭いねえさんが選んだのだから、性格も人当たりも問題はないだろう。
…だがおれには、朋也 が何かを隠しているように感じる。
瞳の奥が、何かを隠すように靄がかかっている…そんな感じだ。
この男の全てが見えないような気がしたのだ。
「…すみません。物心ついた時からこうやって話してきたので、気を遣わないで話すことが得意ではなくて」
真っ直ぐ龍司を見つめたまま、笑みを浮かべた朋也が困った様にふぅ、とため息をついた。
「そっか。…いつも百合亜がね?龍司くんの事を心配しているんだ…。俺も百合亜から少し、話は聞いたんだけど。あまりにも酷いって思って…迷惑かもしれないけど、俺も龍司くんの事が心配で…。」
「っ…」
なんでこんな奴に、こんな風に思われなくちゃいけないんだ…っ
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