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朋也は頷くと、リビングの窓から覗く薔薇をどこか遠い目で眺める。
なにかから逃げられない。
助けてほしい…。
囚われている何かから抜け出せないでいる人がする瞳は、龍司にはすぐに分かってしまう。
それは自分がそうだからだ。
――やっぱり、おれが思っていた事は当たっていた…。
この男は何か隠している。
なにかに囚われている。
「気づいていたよ。だって、俺が隠している事を初めて会って感じ取る事が出来た人は…龍司くんで2人目だからね。―…もちろん1人目は君のお姉さん、百合亜だ。」
「――――!」
「百合亜は、龍司くんと同じで最初に会って見抜いた。龍司くんみたいに嫌われはしなかったけど…。君がいるからなんだろうね…。俺の事をずっと気にかけてくれたよ。あんな素敵な人に俺は初めて会った。こんなにも美しい天使の様な人がいるのかと思った…好きにならない方が無理だ。」
「そう…ですか…。」
切なそうに、懐かしそうに話す朋也の表情は穏やかだった。
じっと外を見ていた視線は、漸く龍司の姿を瞳に映す。
「あの、あなたが隠している秘密って――…」
始めて会った時から、ずっと気になっていた瞳の奥に感じる嫌な何かの正体を聞こうとした時だった。
「ただいまー!龍司来てる~?」
「!!」
玄関の扉が開くと同時に聞こえてきた百合亜の声に、喉まで出かけていた言葉を呑み込む。
パタパタとスリッパの音を鳴らしながら足音が近づいてくると、リビングの扉が開いた。
「おかえり百合亜!走ったら駄目じゃないか…!こんなにたくさん買い物袋を持っているんだし、何より湊を抱っこしたままなんだから!」
百合亜が大きな買い物袋を両手に持ちながらリビングに入って来るや否や、朋也がすぐに立ち上がり、近くに駆け寄ると百合亜から買い物袋を受け取りキッチンへと持って行く。
「ふふ、ありがとう。朋也。」
嬉しそうに微笑んだ百合亜が、空いた両手で抱っこ用の紐を解きながら抱きなおすと、龍司が座るソファへ近づいてくる。
「おかえり。そしてお邪魔しています。百合亜ねえさん…。」
「いらっしゃい龍司。せっかく来てくれたのに、私が出ていった時とすれ違いで待たせちゃってごめんね?」
困った様な表情を浮かべた百合亜が龍司のすぐそばに座ると、龍司の黒髪を優しく頭を撫でる。
龍司は百合亜の不意打ちの行動に恥ずかしくなってしまい、思わず顔を逸らしてしまう。
百合亜は優しく笑うと、抱っこしていた赤ちゃんをそっと龍司の腕の中に抱かせてきた。
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