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―――――・・・ 「なん、だ…これ…」 これは見てはいけなかったものかもしれない。 知ってはいけない事だったのかもしれない それは、百合亜と朋也が買い物に出かけた時だった。 龍司は特に付いていく理由もなかったため、自ら留守番を申し出た。 リビングダイニングのソファで自宅から持ってきていた小説を読んでいた龍司は、落ち着いた気持ちで読書に集中していた。 メイドも多く、両親から事あるごとに暴言や悪態をつかれる騒がしくて居心地の悪い久堂の家とは違い、百合亜の家は静かだった。 落ち着いた雰囲気がとても過ごしやすい。 こんなに過ごしやすいと感じた家は初めてだった。 半分以上読み終わった小説も、読み終わるまであと少し。 昼間淹れてもらったコーヒーを啜りながら静かにページを捲った龍司の耳に、微かな物音が聞こえ顔を上げる。 ―カタン 音は然程大きい音ではなかった。 しかし、テレビも付けていない無音の室内には、微かな音さえもはっきりと聞こえてしまう。 「…なんだ?今の音…」 小さな何かが倒れたような音に、リビングを見渡すが、音の元凶となりそうなものはない。 気のせいかと続きを読もうと小説に視線を落とした時、再び音が聞こえて来た。 ――カタン 「…どこから聞こえてくるんだ?」 龍司は読んでいた小説を閉じると、テーブルに置き立ち上がる。 もう一度音の元凶を探すためキッチンを覗いてみるが、何もない。 始めは、置いてある調味料などが倒れたのかとも思ったが、倒れた形跡も全くなかった。 その後も、テレビの周りや庭先、棚などを一通り確認するも特段変わった事はなかった。 部屋中を見て回ったが結局音の原因は分からず、その場に立ち尽くした龍司がソファへ戻ろうとした時、もう一度謎の音が聞こえて来た。 ――カタン ――ん…? 音の聞こえ方からしてこの部屋から聞こえてくる音じゃない…? 耳を澄ませてよく聞いてみると、10秒ほどの間隔で音が聞こえてくるのが分かる。 しかし、音の聞こえ方からしてリビングの中から聞こえる音ではないと直感的に思った。 2階は百合亜と朋也の寝室や、湊の部屋。龍司が寝泊まりをする部屋を含めた客室が2部屋あるだけ。 家の中には龍司しかいないため、2階から音が聞こえる訳はない。 それじゃあ音はどこから? 考えた龍司は、不意に床が気になった。――いや、床と言うよりも、地下室があるかもしれないと感じたのだ。 百合亜から地下に部屋がある話は聞いてはいない。それなのに何故か気になってしまった。 朋也の事だ。 もしかしたら朋也が隠している“何か”と関係があるのかもしれない 龍司はゆっくりとしゃがむと両手を床に付け、真っ白のフローリング床に耳を当てる。 ――カタンッ 「――ここだ。…なんで床下から音が聞こえるんだ…?地下室でもあるのか?」 音の出所が分かり床から耳を離すと、同時に浮かんでくる疑問。 再度確認をするためにもう一度床に耳を付ければ、決まった間隔で音が聞こえてきた。

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