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百合亜は人の大切にしているものを勝手に弄ったりする人ではない。
それなのに何故?
――そんな疑問が浮かび上がった。
「まさか、この本棚に何か手がかりが…?」
嫌な予感がした。
今度は扉の取っ手ではなく、扉のガラス部分に触れた。
すると、少し前まで見えていた英書の本が一瞬で消え、扉のガラス部分に認証用のパスワード画面と英語のキーボードが映し出された。
「!!」
「パスワード認証画面…?なるほど。そう言う事か…地下への入口はここだったのか…!」
龍司は思い浮かんだ文字を認証スペース欄に打ち込んだ。
―YURIA
全て打ち込むとエンターキーを押す。
しかし、ガラス扉には『ERROR』の文字が映し出され、打ち込んだ文字は消えてしまった。
「違う…。まぁそれもそうか。この家には湊を除いて百合亜ねえさんしかいない。それなのに百合亜ねえさんの名前は設定しないか…」
万が一この認証キーが出てきて押される様な事があれば、簡単な言葉ではすぐに分かってしまう。
「随分と計算されているな。百合亜ねえさんにアイツの秘密はばれているはず…それなのにどうしてここまで徹底的に隠す必要があるんだ…?」
朋也は一体何を隠しているというのだろうか。
その後も、何度か思い浮かんだ言葉を打ち込んだ。
しかし、変わらずERRORの文字が映し出され、固く閉ざされた本棚の扉は開かないままだ。
あの男が設定しそうな言葉は、一体なんだ?
真っ先に思い浮かんだ百合亜ねえさんでもない。湊でもない。
はっきり言って、他に浮かんでくる言葉が見つからなかった。
百合亜達が出かけてから大分時間は経過していた。
このままだと、出かけていた2人が帰ってきてしまう。
そうなれば、床下に隠されたと思われる朋也の秘密を知る事は、もう二度と出来ないかもしれない。
どうすればいい…?
他に朋也が設定しそうな…好きそうな言葉はなんだ…?
焦る気持ちを必死で押さえながら頭をフル回転させる。
そしてふと、最初に言っていた朋也の言葉が脳裏を過った。
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