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『―――こんな美しい天使の様な人がいるのかと思った…好きにならない方が無理だ。』
美しい…天使のような人…
美しい?
「もしかしたら…!」
――BEAUTIFUL.
今度こそ…!そう思ってエンターキーをタップするも、再び認証エラーになってしまった。
「チッ…!これもダメか」
あとはどんな言葉があるだろうか。
朋也が考えそうな言葉…
なんとなくではあるが、この言葉の中に答えがあるような気がする。
考えろ。
考えるんだ。
朋也が考えそうなのは絶対百合亜に関係してくる事だ。
分かりそうで分からない…朋也が百合亜に対して強く想っていそうな言葉は――…
“―――こんな美しい天使の様な人がいるのかと思った…好きにならない方が無理だ。”
美しい天使の様な人…
美しい…天使…
天使…?
「まさか…!」
ハッとして、スペース欄に単語を打ち込む。
――ANGEL
頼む…っ当たっていてくれ。そう心の中で強く願いながら、エンターキーをタップした。
―――ピピッ
「!!良かった…開いたぞ…!」
本棚から解除音が聞こえると、閉ざされていた本棚の扉が開く。
何とか間に合って良かったと安堵しながら、観音開き式の扉を両手で開けた。
しかし、そこにはガラス越しで見えていた英書の本は一つもなかった。
「…なんだッ…これ…」
扉を開けた先に現れた光景に、目を見開く。
狭く薄暗い空間には、地下に続いている階段があるだけだった。
全面むき出しのコンクリートで出来た空間はひんやりとしていて、階段下から微かに香る薬品の様な匂いに、表情を強張らせる。
地下への入口。もしくは何か手がかりになるものがあるとは思っていたが、本棚がまさか地下への扉代わりのフェイクだとは思ってもいなかった。
龍司は、確認のために扉を閉めて見た。
どうやら扉を閉める事で自動的にロックがかかる仕組みらしい。
再び扉を見て見れば、ガラス越しに見えるのは綺麗に並べられた英書の本だった。
「なるほど。地下室への入口だと気づかれないように、フェイクで本棚として見せているという事か…」
どうやらこの地下には、余程見られたくないものがあるようだ。
「月嶋朋也…お前は一体何を隠している?」
龍司は再び本棚の扉を解除し、階段へと足を踏み入れた。
薬品の臭いに交じって、少し生臭いような鉄の溶けたような臭いがする。
普通の家だったら、まずしない臭いだ。
「――なんの臭いだ…?」
壁に手を添えながら、薄暗い階段を一歩また一歩と静かに下りてゆく。
30段程はある長い階段を下まで降りれば、鉄製の扉が現れた。
扉付近を一通り見て見る。
今度は本棚の時の様な認証画面もボタンも出る事はなく、扉に鍵穴も見つからない事から、この扉には鍵はかかっていないのかもしれない。
龍司はドアノブをゆっくりまわした。
「なん、だ…これ…」
ギィ…と軋みをあげて開かれた扉の先には、信じられない光景が広がっていた。
2mはある大きなカプセルが天井から床まで綺麗に並べられており、一目見ただけでも数十個はあるだろうそのカプセルの中には、綺麗なドレスとメイクで着飾った美しい美貌の男女が“飾られて”いたのだ。
あまりの衝撃的な光景に目が離せない。
カプセルの中に入っているのは人形なんかじゃない
人形の様に動かない“生身の人間”だったのだから―――。
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