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百合亜の家から久堂の家に戻って5か月が経った。
計画も順調に進んでいて起爆装置も殆ど完成しており、記憶を消すワクチンも最近になって漸く完成した所だ。
肝心の芹名に頼んだ薬の開発だけが中々上手くいかずに、完成まであと少しという所で失敗を繰り返していた。
龍司が推測した通り、朋也は百合亜と湊に付きっきりらしい。
毎晩来る百合亜からの電話で百合亜が話していた。
その為、新しい人間の誘拐実行が行われる事はなく、芹名から命令が下ったという連絡も来る事はなかった。
「…あと少しだというのに…。」
自室のオフィスチェアに座り、パソコン画面を見ながら舌打ちをする。
中々思い通りに完成しないワクチン開発に、やり切れない悔しさと怒りが込み上げてきて、広げられた書類をぐしゃりと握りしめる。
その時、自室の扉がノックされた。
これまで龍司の部屋に訪れるのは、百合亜とメイドだけだった。
しかし、百合亜が居なくなった今、訪れる人物と言えばメイド位しかいない。
だが、夜の遅い時間にメイドが龍司の部屋を訪ねる事は今までなかった。
パソコン画面に映し出された時計を見れば、12時を回ろうとしている。
ありえない時間帯のメイドの訪問に、顔を顰めた。
「なにか用か?今何時だと思っている」
龍司はドアを一瞥すると、扉の向こう側にいるだろうメイドに向かって苛立ちを隠さない口調で返事をした。
扉の向こうからはなんの応答もなく、扉を開ける気配するしない。
――こんな時間に部屋に来ておいて、おれの問いかけに返事をしないなんて失礼極まりないな。
一体どの礼儀知らずなメイドだ?
苛立ちながらパソコン画面を閉じると、扉の方へ歩いていく。
静かすぎる扉の向こう側だが人の気配はするだけに、誰かが立っている事は間違いない。
龍司は、静かにドアノブをまわした。
「おい!一体何時だと思っているんだ?こんな時間に…っ…!?」
てっきりメイドがいるのかと思っていた龍司は、部屋の前に立ち尽くす人物の姿に驚いてしまった。
だって、そこに立っていたのは―…。
「…龍司。話がある。」
久堂財閥の社長でもあり、龍司の父親でもある洸太郎だったのだから。
いつもならとっくに寝ているはずの洸太郎が、なぜここにいるのか。
今まで、自分の子供として見てくれなかった父親が、自分の部屋に足を運ぶことなんてこれまで一度もなかった。
どんな対応をして良いの変わらずに呆然と立ち尽くしていると、洸太郎が咳払いをする。
ハッとして我に返った龍司は軽く会釈をする。
「…まさか父上がいらっしゃると思わなかったので…すみません。…話というのはなんでしょうか?」
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