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―――なるほど。 これからの久堂の更なる繁栄の為にも、久堂と肩を並べる月嶋財閥と繋がりを深くしたいという訳か…。 どいつもこいつも、自分の欲望のために動く人間しかいないな。 「…一度会わせていただけますか?さすがに会った事もない人と婚約を交わすなど、相手のお嬢さんにも失礼ですし、おれも納得する事はできません。」 「お前に言われなくとも、そんな事は分かっている。明日、七瀬さんと会ってもらう事になっている。仕事が終わったら、すぐに久堂のオフィスビル近くにあるレストランに行くんだ。」 そう言って、洸太郎は再びジャケットの内ポケットからB5サイズの紙を出すと、綺麗に三つ折りにされていた紙を開いて龍司に渡した。 渡された紙を受け取る。 シックなデザインと一緒にレストランの写真と住所、ラストオーダーの時間やドレスコードなど詳細が記載されていたパンフレットだった。 住所を見れば、会社から歩いても5分はかからない場所にある事が分かる。 お洒落な外観と本格シェフが作るイタリアンが自慢のレストランは、その確かな味と上品さからセレブご用達と言われていて、テレビなどのメディアで今騒がれている有名な場所のようだ。 中々予約がとれないと言われていて、1年以上予約で埋め尽くされているらしい噂をどこかで聞いた事がある。 「――ここに、明日行けばいいのですか?」 「そういう事だ。…丁度明日、11時から月嶋財閥の社長と打ち合わせが入っている。レストランにはお前と七瀬さん二人きりの予定だから、打ち合わせ時に月嶋社長には挨拶をきちんとしておくんだ。」 話は終わりだ、――そう言うと洸太郎はソファから立ち上がり、龍司に背を向ける。 俺に拒否権はないという事か…なんともこの人らしい…。 自分の言いたい事だけを話し、人の話も気持ちも聞こうとしない。 なぜ、こんな人間が海外でも事業を繰り広げる久堂財閥で社長という責任のある立場を任せられているのか…、龍司は不思議でたまらなかった。 「…それと、七瀬さんはおまえの事をかなり気に入っている。一目惚れをしたそうだ。」 「…は?」 部屋を出ようとした所で洸太郎が足を止め、呟いた。 「いいか龍司。月嶋のご令嬢がお前の様なゴミに好意を向けて下さっているんだ。これは、久堂を更に大きくしていく上で絶好のチャンスと言っても過言ではない。…はっきり言って、お前の気持ちなどはどうでもいいのだ。七瀬さんがお前を好いている…それだけで婚約するのはもう決定の事」 「……。」

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