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――この人は本当にどこまで… 人を 息子をなんだと思っているんだ 背を向けたままの洸太郎を睨む。 怒りで震える拳。その怒りを(しず)めるようにして、もう片方の手を添えた。 「お前ごときに感情など不要だ。…ただ、私の命令に従っていればいい。七瀬さんに失礼な態度をとったら私が許さない。」 部屋を出ていく寸前に部屋に落とされた洸太郎の言葉に、龍司は何も答えられなかった。 いや、何も言えない状況を作られていた。 拒否する事も反抗する事も出来ない悔しさで、強く噛みしめた唇からは血が滲んできた。 「…くそッ!!!」 両手をテーブルに叩きつける。 テーブルに置かれた写真とレストランのパンフレットを握りしめると、床に叩きつけるように投げ捨てた。 どうやったらこの呪縛から逃げる事が出来る…ッ!! こんなのッ…! 「人形は、おれの方じゃないか…ッ」 父親の言う事にも、母親の言う事にも一切逆らえず、久堂のために働いて自分の感情で動く事も許されない。 親にも誰にも必要となんかされてない。 自分が好きになった人を好きになる事も許されず 自分が好きになった人を愛する事すらさせてもらえない まるで、感情を殺されながら生きている操り人形の様だ。 涙は不思議と全く出てこない。 あの親に流す涙など持ち合わせていないからだ。 切れた唇から鉄の味が広がり、少しだけ怒りがおさまった気がした。 龍司は赤く染まった唇を手の甲で拭うと、ふらつく足取りでテーブルの前に座り、ベッドに体重をかけるように背中を預けた。 「…まったく本当に笑えてくるよ。」 「壊してやる」 ――なにもかも。 父上も母上も。 朋也も、月嶋財閥も。 「おれは、おまえらの言いなりになんてならない。おれの生き方はおれが決める」

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