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予想を上回るクオリティの高さで驚きと恐怖の連続だった式は、お化け屋敷を出た後、しばらく廊下の壁にもたれて放心していた。 「お兄ちゃん、大丈夫?」 雛未に頭を撫でられて苦笑した。 トートバッグに入れていたペットボトルのミネラルウォーターを飲み、一息ついたつもりが、血文字風の看板が立てかけられた教室から悲鳴が聞こえ、またしても恐怖を煽られた。 「黒髪ロングの白塗りは反則だよな」 隹に笑われて、むっとして、言い返そうとしたら再び悲鳴が聞こえ、式は首筋を粟立たせた。 「もう帰ります」 「可愛いペットの写真展にあんたの写真も飾ってもらうか」 「どういう意味ですか、それ」 「隹先生、お兄ちゃん、静かな場所で休ませてあげてください」 お化け屋敷の中を一人先頭切って進んでいた雛未は、顔色が悪い式の両手を握った。 「お兄ちゃん、今日は来てくれてありがとう。夏休み中、お父さんもママもお兄ちゃんに会いたがってた。(きらり)ちゃんはよくわからないけど」 「雛未、もう行くのか」 「うん、隹先生。お兄ちゃんのことお願いします」 こどもじみた高い体温、柔らかな両手。 それでもサイズは昔と比べ当然変わっていた。 少し伸びた爪の先からは大人の兆しが仄かに匂い立っていた。 「……冬休みには帰ろうと思う。でも、それまでにまた二人でどこか出かけよう、雛未」 式の言葉に雛未は笑顔を浮かべた。 「お兄ちゃん、変わった。私の選択、間違ってなかった」 式に手を振って、隹に小さく会釈して、雛未は二人の元から走り去っていった。 角を曲がって見えなくなるまで兄は妹の背中を見送り、教師は見えなくなってからも生徒が駆けていった方向へしばらく視線を送り続けた。 「雛未は、左手首、どうかしたんですか……やたら触って気にしていませんでしたか?」 「おまじない」 「おまじない、ですか」 「俺が雛未に、な。ところで。あんた歩けるのか。ひょっとして腰が抜けてるのか?」 「……抜けてません」

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