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第4話
始まりは高校での友達間の罰ゲームだったと思う。
王様ゲームの要領で指名された相手とキスをするように言われて、まあ触れるだけだろうと簡単に考えていたらがっつりと舌まで入れられてしまった。それから廊下ですれ違う時などに掴まり人気のないところで何度も口付けを交わした。既に同性との行為に慣れていた俺は何の抵抗もせずに、綺麗な筋肉のついた腕や背中に手を這わした。
ベルトのバックルを外され緩められたズボン内の肌に触れる感覚に首を振って口付けから逃れ、見つめた相手の顔は確かに欲情を示していた。
男との経験があるのかと問えば、ないと返ってきた。誰が来るかわからない場所でのんびりと手探りの相手をする時間はないため、跪いて手早くくつろげた相手の下肢を前にしてろくに扱きもせずに口淫だけで射精を促した。時間と場所を選ぶならいくらでも付き合うと言ったかもしれない。それから流れるままに同級生の田島京助ともセックスフレンドとなった。彼は童貞でなかったし、顔も頭も良い。男に手を出さなくても健全な交際をすることも出来るだろうと何度も思ったが、男のアナルにペニスを突き入れて擦り上げる快楽に慣れてきた彼とのセックスは気持ちが良かったので何も言わずにずるずると関係を続けた。
その関係は別々の大学に進学しても続き、頻度が減ってきたなと思う頃連絡が来なくなったため新しい環境で忙しくなったのだろうと自己完結して、また一つ増えた思い出を心のファイルに綴じていたのだ。
再会した時に彼が過去をなかったことにするのなら、それに合わせる気持ちは持ち合わせていた。だが、あの頃を思い出させる食事のあと、家に来て欲しいと言われ車で20分ほどの距離のあるマンションの一室に足を踏み入れたところで抱きしめられたことに内心動揺した。
「……今、付き合ってる人いないの?」
「今はいない」
「お前が予想した通り、俺は今でも体を売ってるよ」
「何で社会人になっても続けてるんだ」
「……体が求めて仕方ないんだ。それに需要もあるし、生きやすい」
「ビッチが」
「まあまあ。希望があるなら処女を演じるから……ヤろう」
気があるから声をかけて触れて来るのだろう。
月日が経ちすぎている彼との行為は初めてと同じようなものだ。
もっとも、処女と言える体はしていない。
スーツの下の肌には薄いものから濃いものまで誰が残したものかわからない鬱血痕が散らばっているし、乳首は長年弄られてぷっくりと大きくなってしまった。
どうか萎えませんようにと思う。
「処女、ねえ。最後まで演じろよ?」
「一度口にしたことは守るよ」
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