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第7話
どうしたらいいのだろうか。
彼女が上層部に被害届を提出すれば、その上司にしかるべき処置は下されるはずだ。
というのは、表面上しか知らない者の意見に違いない。
現実問題、加害者は必ず否定する。
襲っていない、合意だった、誘われた。
そんなことを主張されれば、被害者の立場はなくなり、泣き寝入りをする羽目になってしまう。
ただの性欲処理ならば金を出せばどうとでも出来るのに、彼女を選んだのは狙いやすいだとかそういった理由からかもしれない。そして、それを覆す俺自身を差し出して安全を守れたが、人間は貪欲な生き物だから留まることをしない。更なる欲を出してしまう。頼むから貪欲なのは仕事だとか自分の能力にだけ使ってくれないかと思う。他人に欲求を満たしてもらおうなどと考えるのは間違っている。
彼の言う囲うという意味を改めて考えた。
他の人間に一切体を開かずに夜も朝も、昼さえも求めた時に応えるということ。
ありえない。
今まで恋人を作らずにすごしてきたのは、縛られるのが嫌いだからだ。それを体だけの関係の者に崩させるなんて許せない。
定期的に通うジムのように京助と再び肌を合わせるようになって3回目あたりで抱えていたこの悩みと自分の考えを打ち明けてみれば、静かに聞いていた彼は自分を殺してまで従わなくて良いと言った。
正しい言葉を狂いなく与えてくれるのは昔と何一つかわっていないので、途切れることなく関係が続いていたのではないかと錯覚を覚える。
なぜ離れたのか、なぜまた抱くのか。
そんな女々しいことを聞くつもりはない。
忙しくなって会う時間を作れなくなったのかもしれないし、再び見かけて懐かしさから手を出したのかもしれない。
それは端末のアプリに似ているなあと思う。削除されていなかっただけでもありがたいことだ。
砂糖2杯と適当にミルクを注いだコーヒーを飲む朝は静かさを閉じ込めたようで好きだった。
テレビもつけずに革張りのスツールに腰かけて熱いマグカップを手に持ち、窓ガラスの外の景色を眺める。昼間はそこそこ気温が上がるが、朝方の、太陽がようやく昇った時間帯は涼しいほどだ。
他人の家で使っていい食器やタオルなどを割り当てられて使うことに抵抗はない。
素肌に巻き付けたブランケットが体温に馴染んで心地良い。
「新しいシャツとネクタイ出したから」
「ああ、気を遣わなくていいのに。ありがとう」
「いつもどうしてるんだ?」
「んー、ネクタイだけ借りる時もあるかな」
「そうか」
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