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第2話
「……大まかな流れはこんな感じ。メモ取れた?」
「はい!」
次の日。早速夏也を連れて、一日の主な業務を伝えていく。関わることのある別部署の場所や人、取り引き先のこと、自分も最初は大変だったと懐かしみながら。ふと、夏也の前職が何だったのか気になった。
「そういえば、花峰くんの前職って何?」
「……はい?」
「あ、いや、個人的な興味だから、言いたくないならいいんだけど」
「いえ、ビックリしただけです。前は、映像関係でした」
「映像?」
カメラマンとか、グラフィックデザイナー辺りだろうか。イマイチ見当がつかず難しい顔をした秋人に、夏也は苦笑する。
「すみません、上手く説明出来ないんですけど」
「ううん、別に根掘り葉掘り聞くつもりないよ。全然違うジャンルだったから、つい」
「面接官にも言われました。まぁ、やってみたかった、くらいです」
二人は再び部署のデスクに帰ってくると、秋人はPCを立ち上げる。
「とりあえず、目を通して欲しいデータはそっちに送るから、ちゃんと読んで」
「はい」
「んで、今日はもう帰って大丈夫だから」
「え、いいんですか?」
「部長も仕事振らないってことは、やらなくても回るの。今は急ぎの案件もないし」
「分かりました」
秋人はデータ送信に成功したのを確認すると、別のタスクを開いた。
「俺は俺の仕事がまだあるから、悪いけど一人で大丈夫?」
「はい、もちろんです」
「詳しくは来週からってことで」
「分かりました」
夏也はお疲れ様です、と頭を下げて部屋を後にした。秋人はPC画面から視線を切らずに手を振った。
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