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※第10話
「沢山だしたわね。綺麗にしてあげるわね」
頭を撫でながら、再度シリンジに常温にしている水を入れて中へ注ぎ込む。
「……も、いや…だ…や、だ」
再び注がれるのを嫌がる工藤の腹を、無慈悲に串崎はぐいっと押し込み無理に排出させる。
「中洗わないと駄目でしょ」
「あ、ッは…ああ、はあ……ああ」
「いいこね、甲斐。もう一回洗うわよ」
「も……ッ…や……っ、ああ、や、だッ……」
再びシリンジを挿し込んで内部に水を入れて、ほとんど透明な液体が出るのを確認してから、
「綺麗になったわ。ゆっくり拡げましょう」
串崎はそっと工藤の黒髪を撫でて、ゴム手袋を嵌めたままの指先でアナルが傷ついてないかを確認する。
「く……う……も、かんべ、んしろ、よ」
「昨日は指しか入れてなかったものね。急にで苦しかったわよね。だから、今日はコレを入れて、少しづつ拡げましょう」
頭を撫でながら怖くないわよと囁かれ、目の前に小さい風船のようなものがついた器具をさらされて、工藤は唇を震わせた。
「ン……で……そんなことッ」
怒りに震えても逃げる術もなく、器具をローションに濡らして少しづつ内部へと入れていく。
異物感に眉を寄せて、工藤はその感触を嫌がるように目を閉じる。
「甲斐が、いいこになるためよ。怒らせた人に体で侘びを入れるためってトラさんは言ってたわ」
「ッ……っつ、は」
極道の中で、衆道の風習は昔はよくあった話である。本当に信頼できる関係を築くために必要とされた。
男であることを捨てさせられて、再度男だと認めさせるためにどんな汚れ仕事でも率先してするようになるというプライドの駆け引きだ。
佐倉は工藤の処分の代わりに、組長にその取引を持ちかけるつもりなのである。
大体組長である親に銃を向けた工藤は、悪くすれば破門された上でこっそり殺されかねなかった。
それは分かってはいた。
「大丈夫。すぐここは、おちんちんが好きな穴になるから。そうすれば、貴方も辛くなくなるわ」
工藤は目を見開き、首を振る。
そんな心配は要らん世話である。身体のつらさなんてどうにでもなる。
確かにすぐに体を差し出せといわれたら、舌を噛んで死ぬか、組長を道連れに殺していたかもしれない。
佐倉もそれを見越して、ここに連れてきたのだろう。
「これを5分おきに一ミリづつ拡げていくわ、まずはこの大きさから入れていくわね」
「や……め、ろッ、ざけ、ンな」
このままここにいたら、あの組長に体を差し出す運命なのだと知り、工藤は必死で抵抗しようと試みる。
「甲斐。貴方……死にたくないんでしょう?」
そうだ、俺はこんなところで犬死にはしたくない。だからといって衆道という方法で男でなくなるのも嫌だ。それくらいなら……死ぬ、か?
いやだ……こんなとこで死ぬのは、嫌だ。
葛藤する工藤の顔を、串崎ははかるようにじっと見返した。
「自覚が必要ね。貴方はもう男じゃないわ。今日は薬は使わないわ。だから貴方のここがおまんこになってくのを、ゆっくり見て自覚しておくのよ」
逃げられはしないのよと冷たく告げた串崎は、少しだけポンプに空気を送って、ゆっくりと内部に器具を慣らすように動かした。
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