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誘惑による成功。
ベイジルは自らの唇で彼の口を塞ぎ、舌を差し入れた。身をくねり、あるいはロシュの一物に手を伸ばし、ベイジルは自分を受け入れてくれることを願い、ただただ薄いその唇を貪る。するとロシュはオメガの誘惑にとうとう屈伏したようだ。ベイジルの軟弱な身体を押し倒した。骨張った男らしい大きな手がシャツの中へ侵入するとベイジルの腹に小さな命が宿っていることを確認するかのように円を描く。その手の動きはとても優しく、官能的だ。
ベイジルはその先を強請るようにして身を捩り、甘い声で催促する。それでもロシュの手つきは変わらず、大きな円を描きながらゆっくり胸部へと動く。やがて彼の親指の腹が乳首に辿り着いた頃には、すっかりベイジルの乳首は硬く尖っていた。まだこれといって何もされていないというのに、もうすっかり上気立っているなんて……。ロシュは自分から誘っておいてと思うだろうか。けれどもベイジルの心に羞恥が宿っているのも事実だった。恥ずかしくて顔を逸らせば、その瞬間、目の前にある薄い唇の端が上がっているのが見えた。にやりと笑うその姿も魅力的だ。ベイジルはたまらず官能の声を上げた。
ロシュはその声が気に入ったのか、指の腹を使ってベイジルの乳首を執拗にこね回す。官能の涙で覆われた目が眩む。これまでとは比べようにもならない強烈な快楽の波だ。
ベイジルは、発情期であれば女性男性問わずに孕むオメガという性が大嫌いだった。
それなのに今、自分はどうしたことだろう。オメガという性を利用してたった一人のアルファを落とそうとしている。そしてロシュから与えられる快楽から抗う気持ちがこれっぽっちもないのが不思議だった。――いや、抗わないのはロシュという人柄に心惹かれたからだ。これはスターリーの時とは違う。ロシュになら、自分の何もかもーー命すらも捧げられる。そう思った。
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