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彼の正体。

「その質問のひとつは俺が教えてやろう。お前の命を狙う理由は子供を下ろさないからさ」  悲鳴にも似た声でベイジルが大蛇に姿を変えた老婆に尋ねた。しかしその答えは意外な人物から返ってきた。スターリー・ジギスムンドだ。彼が大蛇の後方から姿を現した。 「……スターリー」  思ってもみなかった人物が現れたことでベイジルはまるで頭を金槌で打たれた気がした。 「貴様……」  どうやらロシュはスターリーと認識があったようだ。ロシュの意識はまだあるようで、彼は現れたスターリーを見るなり苦痛に歪む唇を噛みしめ、呻り声を上げる。 「久しぶりじゃないか。しかしお前にはげんなりしたよ。まさか依頼主の俺を蹴って相手方に付くなんてな。とんだペトロ神もいたもんだ」 「ペトロ神? ロシュが?」  ペトロ神とは童話やら神話に語られているそれのことだろうか。  まさかとは思うものの、けれども心の底ではどこか頷けるような気もした。驚きを隠せず、口を開くベイジルに、スターリーは人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。  ーーああ、いったい彼のこの笑みのどこが美しいと思ったのだろう。嫌味な笑みは少しも心を落ち着かせることがない。それどころかあら波立たせてくるばかりだ。気分なんて一向に良くはならない。この男と所帯を持つことを夢見ていただなんて気味が悪いにもほどがある。  ベイジルはスターリーに冷ややかな視線を送る。その表情が恐怖しているとでも取ったのだろう。彼はけたけたと下卑た声を上げて笑った。

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