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苛立ち。

「相手は?」  不快さが膨らんでいく中、それでもロシュはふつふつと湧き上がってくる怒りを抑え込み、辛抱強く尋ねた。 「名前はベイジル・マーロウ。愚かなオメガだ」  彼が言うには、愚者はオメガだと言うが、果たして愚かなのはどちらだろうか。  オメガは発情期ならば性別を問わず、男女共にアルファやベータを魅了し、子を宿すことができる。  彼らの世界ではそれはとても厄介で淫らだとされている。  けれどもそのようにしたのは他でもない、自分たち神である。  そもそもオメガやアルファ。ベータという性を創造したのには理由がある。  彼らが誕生した背景には、子孫繁栄が成されない国があったからこそだった。  そのことでまさか上下関係ができるとは思いもしなかったのだ。  けれども果たして、子を身に宿すことがそれほどまでに淫らだろうか。  新たな生命の誕生がそれほどまでに卑しいというのか。  人間の考えることは理解しがたい。 「――――」  それにしても、この男はいったい何様のつもりだろう。  彼が発言するものはいちいちロシュの耳に障る。  自分のことを差し置いて、神のような態度で他人を評価する。  この手の依頼人は底が知れている。  ロシュは傲慢極まりない彼を見下ろし、そこでようやく彼の身形を確認した。  彼の身長はロシュよりも二〇センチほど低い。一八〇あたりだろうか。  年は二〇代半ば。  金髪に鋭く尖った顎。彼は余程自分の身体に自信があるらしい。胸元がぱっくりと開いたシャツを着こなしている。

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