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呪われた性

 そうこうしている間に、熱を募らせる身体は限界を迎えた。  重たい足を持ち上げることができず、つま先がタイルに引っかかった。熱に脅かされた身体が鈍い音を立ててタイルへと激突する。  固い地面に打ち付けられ、鈍い痛みが広がる筈だった身体は――けれども熱を持っているおかげで強烈な疼きへと変化する。 「ああっ!!」  ベイジルの喘ぎにも似た甘い悲鳴が静かな夜気に響く。  誰かこの狂おしい熱をどうにかしてほしい。ベイジルは切に願う。  けれども今は深夜で、しかもここは人通りが少ない裏路地だ。  ここに人がいることすら誰も知らないだろう。  だからこそ、ベイジルはこの道を帰路に選んだのだが、苦しんでいる自分が誰にも見つけてもらえないのは寂しい。  このまま……。  ここで一夜を過ごせば、万が一にもこの熱が引いてくれるかもしれない。  愛されてもいない相手に抱かれるのなんてまっぴらだ。そう思うのに、孤独になりたくないと思う自分もいる。  見つけて。  見つからないで。  極端な二つの気持ちが交差する。  しかし、今はヒート状態だ。たとえ見つけてもらえたとしても、誰も優しい言葉のひとつさえかけてくれないだろう。自分が発するフェロモンに浸食され、動物的本能で半ば強制的に組み敷く。酷い抱かれ方をされるだけだ。  だったら、やはりこのまま見つからない方が良い。  ベイジルは永遠の孤独をただひたすら祈った。  けれどもベイジルの願いは届かない。 「おい、どうした? 大丈夫か?」  地面に(くずお)れた自分を心配する二人の青年が駆け寄ってきた。

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