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垣間見える悲涙
そうしてようやく立ち止まったその先に見えたのは三つの人影だった。
三人のうち、二人はまだ学生だろうか。青年が一人の人間を羽交い締めにしていた。
羽交い締めにされている人間もどうやら男のようだ。
そして全貌を見て取れた時、ロシュは目を疑った。
あろうことか、二人は男の着ている衣服を剥ぎ取り、唇を這わせているではないか。
大きく開脚させられた男の真下にあるのは昂ぶった彼ら自身の一物だ。
彼らは今まさに、男の後孔を貫こうとしているところだった。
彼は果たして、青年ら二人にこんなところで貫かれるそれをよしとしているのだろうか。
欲望のままに動く死神たる自分がいうのもなんだが、この光景はあまりにも非常識的すぎる。
彼は華奢な腰をくねらせ、悦に入っている。早く貫いてほしいと言わんばかりだ。
しかし何故だろう。
その声は喘いでいるようにも思えるのに、悲鳴のようにも聞こえる。
それにあれは何だろう。
快楽に頬を染めながらも、苦痛の色を浮かべている。
彼の頬を伝う一筋のそれは街灯の薄明かりで浮かび上がる。
涙だ。
ああ、彼は泣いている。
それを理解した時、言い知れない何かがロシュの胸を強く締めつけた。
そしてロシュは動く。
「何をしている!」
ロシュが声を上げると、青年達は我に返ったかのように手を止め、こちらを見た。その目はまるで獲物に群がる獣のようだ。気配は飢えた肉食動物のそれに近い。
これらからは理性の欠片すらもないように思える。
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