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先が見えない未来
名も知れない他人に身体を暴かれ、快楽のみを植え付けられてしまう。
ベイジルは恐怖に襲われ、唇を噛みしめる。身体を折り曲げ、蹲った。
しかし男はくぐもった声を上げるだけで、ベイジルに触れようとしなかった。
「欲望を抱くことは悪いことではないよ、ラブ。だけど今日はもう止めておこう。君の身体に負担がかかってしまうからね」
ああ、やはりぼくはこの男に抱かれたんだ……。
彼と同じ気質の、傲慢な男性に!!
――そうだねベイジル。君はよくやったよ。スターリーにはとことんこっぴどく振られたというのに、その上まだ懲りもせず、彼と同じような性質の男を引っかけるなんて!!
これから先、この腹に宿った新しい命をどうすればいいのか。
今の現状を考えると胃がきりきりする。
愛していた人からの突然の裏切りは正直ベイジルにとって巨大なダメージを与えた。
十年もの長い年月を共に過ごしたのに、彼は|躊躇《ためら》いなくあっさり捨てたのだ。
幾度となくベッドの上で情を交わし、その度に愛の言葉を紡いでくれた彼。けれどもあれらはただの戯れ言で、本当は自分のことなんてこれっぽっちも想っていなかった……。
――スターリーから与えられる愛が真実だと一度たりとも疑わなかった自分が呪わしい。
ああ、胸が痛い。
瞼が熱い。
視界が霞む。
彼のことを思えば前を一点だけを見つめる目に涙が込み上げてくる。
だけど涙は禁物だ。
少なくとも今のこの状況下では!!
ベイジルは歯を食いしばり、背後にいる件の男の方を見た。
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