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嘲笑う影
すなわち、赤い目のエルズーリー、と――。
そのページの文字を見たとたん、スターリーは怒り狂っていたことも忘れ、唇を緩めた。
果たして見返りを求めない女神とは……。
これはブードゥについて、アルファの性を持つ、選ばれしジギスムンド家、先祖代々から伝わってきた古文書だ。
ブードゥ神は贄を必要とする神である。
それを彼女は贄を必要としないという。
普通ならば信じ難い。
しかしこれを疑っている時間の猶予が自分には残されていない。
社長令嬢との結婚の日取りは刻一刻と迫っている。
女神が幸せにしてくれると請け負ってくれているのだ。だったらそれを信じよう。そして誰にも脅かされない栄光の道を歩むのだ。
「ベイジル、ぼくの勝ちだ」
かび臭い臭いが充満する小さな一室に勝利の笑い声が響いた。
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