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喧噪の街
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相変わらず騒々しい街だ。
ロシュは街の喧噪に顔を顰 めた。
ニューオーリンズはアメリカの南部に位置する湾岸都市として流通が発展した大都市だ。ストリートカーと呼ばれる路面電車は何台も通っているし、傍にある線路では貨物船が行き来している。
その日の日中。魅力的なメインディッシュを手に入れるため、大きなビルのそこに彼はいた。
悪魔は闇の中で動き回ると考えられがちだが、その実は違う。太陽の下でも行動は可能だ。とりわけロシュのように自我が強く、強力な魔力を持つ者であれば、の話だが。
――とはいえ、日中に動くのだから、彼にも行動の限度というものがある。余計な魔力を使わないに越したことはない。そういうことで、ロシュはこの世界に則って人間らしい方法でメインディッシュを探すことにした。
「ミス・クランベル。ひとつお尋ねしたいのですが……」
ロシュは、大きな高いビルの中にある、『住民課』と書かれた窓口で、クランベルという名札を胸に付けているブロンドの女性に尋ねた。
年は二十四くらいだろうか、若さ故の張りのある艶やかな白い肌。腰まであるだろうブロンドの髪をひとつに束ねた彼女は魅力的だ。
ミス・クランベルはロシュを見たとたん、翡翠の目を輝かせ、赤い唇を舐めた。
どうやら彼女はロシュを気に入ったらしい。
自分は今日も完璧だ。魅惑術もきちんと発動できている。
――しかし、今は彼女の肉体に用はない。
なんたって食事で腹を満たした彼は、今夜のメインディッシュを手に入れることで頭が一杯なのだから。
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