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vision
†
――信じられない。
ベイジルは目の前で子供たちと戯れている、遊び人ふうの男に驚いていた。
ベイジルたちオメガはいつだって玩具として扱われる。
だからてっきり、ロシュもまた性的な欲求を晴らしたいがためだけに近づき、スターリーたちのように無体な扱い方をするのだと思っていた。
――しかしその実は違った。
彼はオメガが放つ驚異的なフェロモンさえも駆使して欲望を抑圧し、自制心を保った。
これまで誰ひとりとしてオメガのフェロモンに耐えられなかったのに、ロシュ・サムソンだけは違った。彼は強靱な精神を持った心優しいアルファだ。
そして今、彼は健全な男性そのものだった。爽やかなレモンイエローのポロシャツとスラックスといった動きやすそうな服装で、子供たちが流す鼻水やらよだれやらと格闘中だ。
昨夜、あれほど熱くベイジルを抱いた彼とはまったく別人のように、このチャストロミエル教会で動きっぱなしだった。
子供たちはきゃっきゃと明るい声を上げ、教会のリビングじゅうを這い回っている。彼らはロシュを困らせるのに大忙しだ。まるで鬼ごっこでもしている気分なのだろう、テーブルの下を器用にくぐり抜け、タオル片手に追いかけてくるロシュから楽しそうに逃げている。
ロシュは生まれて間もない赤ん坊の扱いにも慣れるだろうか。
ベイジルの頭にふと、おかしな考えが過ぎった。
ベイジルの頭の中に、未だ見ぬ自分の子供を抱き上げるロシュの姿が浮かんだのだ。
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