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先の未来。

 なぜ自分はロシュとの未来を考えてしまったのか。  自分の体内に宿る命を彼と共に育てていくことを想像するだなんて、どうかしている。  ベイジルは自分の生まれ出た考えに困惑していると、ふと視線を感じて顔を上げた。  そこには赤い目がこちらを見つめている。  ロシュの視線はまるで、ベイジルの心の中をすべて見透かすようだ。  真っ直ぐなその視線がベイジルを射貫く。  居心地が悪い。  ベイジルは視線を逸らすようにして足下にいる赤ん坊を抱き上げた。 「まあ、大変! 明日の分のミルクがないわ!!」  すっかり自分の居場所を無くしたベイジルの耳に、シスターの声が聞こえた。  おかげでロシュから逃げる口実ができた。 「僕が行きます! 車のキーを取ってきますね」  ベイジルは自ら手を上げると、ロシュは眉を潜めた。まるで愚かな行為だと言わんばかりのロシュの反応に驚きを隠せない。 「いや、おれが行こう」  子供たちを脇に移動させた彼はベイジルの前に立ち塞がった。 「なぜ? そこまで移動距離は長くないし、買い物くらい一人で行ける」  たかが買い物ひとつでなぜ、彼はこうも不機嫌になるのかが判らない。  ベイジルが大丈夫だと言うものの、けれども彼は依然として眉間に深い皺を刻むばかりだ。  まさか彼は本当に自分の体内に赤ん坊がいることを知っているというのか。  ――いや、しかし。  自分は赤ん坊が宿っていることをスターリー以外には誰にも口外してはいない。  もしかすると、彼はスターリーと知り合いなのだろうか。いや、それもないだろう。

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