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彼の本質。

 それに、ロシュを魅了したはしばみの瞳。あれは涙で歪み、哀愁を孕んでいたようにも見える。  もしかすると、あの赤ん坊の片割れ(父親)とベイジルの仲はうまくいっていないのだろうか。  あるいは、ベイジルがこの世界では疎まれているオメガという性を隠し遠し、身籠もったことで相手に知られて捨てられたか。  それとも予期せぬ出来事で離れ離れにあったか。  いずれにせよ変わらないのはベイジルの心だ。  彼は間違いなく、今でもその男を愛している。  魂が傷つくほど。  涙を流すほどに……。  とはいうものの、ロシュにとって相手がいようといなかろうと、それは大した問題ではない。  ベイジルに愛する男がいるならばそれはそれで構わない。番がいようといなかろうと、情を交わすことは可能だ。番からベイジルを奪い取るのは造作もない。それがジェ・ルージュという性質であり、それこそが彼の本質なのだから。  ベイジルの身体を貪り、官能というあらゆる快楽を与えてやれば、自分の魅力にすっかり惑わされ、ロシュの懐にころりと転がり込んで来るだろう。  それだけ、ロシュのテクニックは当然のことながら、魅惑術は完璧なのだから――。

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