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手がかり。

 精霊(ニュンフェ)女性型の夢魔(サキュバス)男性型の夢魔(インクブス)。それに吸血鬼(ヴァンパイア)狼人間(ウェアウルフ)。ロシュは持ち前の色香のおかげで言い寄ってくるあらゆる神々や精霊、悪魔を知り尽くしていた。  ロシュは甘えるような目で見つめ、それから手を伸ばして彼女の滑らかな肌に触れた。 「……頼むよ。頼れる人は貴女だけなんだ」  唇が触れるか触れないかの距離で、彼はもう一度乞う。  すると彼女は瞼を半分まで下ろし、紅を引いた唇からは悩ましげなため息をついた。  彼女がロシュの骨張った男らしい手の甲を撫でる。  まるで愛おしい恋人との運命の再会を果たしたかのように……。 「でしたらほんの一部分なら……」  どうやら上手くいったらしい。  彼女はふたたびうっとりとした様子でロシュを見上げ、小さく喘いだ。  おそらくはロシュのこれで彼女のお尻はきゅっと締まったに違いない。 「それで、貴方が知り得るその方の情報をお教えください」 「それが、ベイジル・マーロウという名前しかわからないんだ――いやまてよ、彼の性はオメガだ」  ロシュが付け加えると、彼女は大きく頷いた。  どうやらこの地域では、名前や生年月日。それから男女の性別の他にも、アルファ、ベータ、オメガという性さえも住民登録されているらしい。  この世界でのオメガは劣等生として扱われている。ともすれば、彼らの人権はほぼ無きに等しい。  彼らにとって、この世界ではどんなに生き辛いことだろうか。

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