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頭が離したがらない。

 情交を覚えていないのがとても残念だ。彼との一夜はとても官能的だったに違いない。  そこまで考えた時、ベイジルは顔を(しか)めた。  ――まただ。  オメガだという性が呪わしいはずなのに、ロマの彼を心待ちにしている自分がいる。  気分はまるで男娼じゃないか。  自分はいったいどうしてしまったんだろう。スターリーに捨てられたことでこれほどまで自暴自棄になってしまったとでもいうのか。  孤独という寂しさを紛らわせるため、人肌を求めているのだろうか。  見るからに|誰彼《だれかれ》構わず遊んでいるに違いないあのロマの男に――。  いや、しかし彼はどの男性よりもずっと魅力的だ。  もちろん、ベイジルはスターリーとしか肉体関係を持ったことはないが、これまで二十五年間生きてきた中であれほどまでに美しい男性は見たことがない。  ベイジルはまたもやあらぬ方向に思考が向いてしまったことに気が付き、首を振る。  ……やれやれ、自分の頭はどうやっても彼を離したがらないらしい。  それでも美しい男性を思考から追い出そうと試みた。しかし、それも見事失敗に終わった。 「危険極まりない煙突掃除の次はどこへ行こうというんだ?」  ベイジルは突如として話しかけられた声に身体を震わせた。  振り向けば――ああ、なんということだろう。  ベイジルの思考に棲み着いて離れない彼がいるではないか。  どうやら自分はどう足掻いても彼の呪縛から解き放たれることは難しいらしい。

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