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狂った計画。
「あら、だって『ライトブライト』さんのご紹介でしょう? でしたら貴方もこちらで責任を持ってベイジルさんの仕事ぶりを見て頂けるということではないのですか? なにせここは人手不足で、残念ながら責任者の夫同様、わたしは手が回りません。ベイジルさんの仕事ぶりや子供たちの面倒をみる人間がいないのですから」
「い、いや、しかしおれ――じゃないぼくは……」
ロシュはかなり困惑している。これまで自信家だった彼がここへきてはじめて狼狽えを見せた。吃 状態になっている。
どうやら彼はこの事態を予測していなかったことが窺える。
「あら、貴方が責任を持ってくださるのではないのですか? わたくしはてっきりそのように理解していたのですが、違いましたか?」
ロシュはほとほと困り果てている様子だ。この様子だと、彼が拒否すればこの話はなかったことになるだろう。
さて、ロシュ・サムソンは果たしてどうするつもりなのか。
ほとほと困り果てている彼を尻目に、ベイジルはくすりと笑った。
どうやら彼には自分も働かされるという計画はなかったらしい。
たしかに、黒の正装をしている彼も自分と同様に子供の面倒を見るような服装でないのは一目瞭然だ。
――少なくとも彼の計画は狂った。
ベイジルからしてそれが小気味いい。
整った顔立ちが困惑の表情になっている。せっかくのハンサムな顔立ちが台無しだ。
――いや、そうではない。困惑している表情は自信に満ちている時よりもずっと人間らしくて魅力的だ。
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