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突然舞い込んだ仕事。
この気持ちは何だろう。
ロシュを見ていると胸の奥に蝋燭の炎が灯ったようなあたたかな気持になる。どこかくすぐったい。
なぜこのような感情が生まれてくるのだろう。
相手は自分の身体を気に入っているだけなのに?
これはおかしな感情だとベイジルは思った。
「……わかりました。明日からぼくも請け負いましょう」
ロシュは渋々といった具合で頷いた。
それはベイジルの新たな働き先は彼によって取り決められた瞬間だった。
それからのシスターの行動は早かった。
契約書やら給料の振込先。それから子供たちそれぞれの注意点が書かれた用紙と雇用契約一式の必要書類を手渡され、サインを終えた今はすっかり太陽も頭上高くに昇っている。
チャストロミエル教会から出たベイジルはふうっと大きなため息をついた。
――果たして自分は子供たちの面倒を無事にみられるだろうか。
いつもの煙突掃除で今日という一日の食事を得るつもりだったベイジルの計画が失われ、その代わりに訪れた仕事がベイジルの両肩に重くのし掛かる。
けれども正直なところをいうと、ベイジルの身体も限界にきていた。
つわりは日常茶飯事にあるし、身体は重い。煙突掃除は体力的に問題が生じつつあった。
ロシュの強引なやり方は気に入らない部分もあるが、それでも子供たちの面倒をみるのと煙突掃除とでは身体の使い勝手も違うし、なにより、いざ自分が子供を産んだとして、子供との接し方が多少なりともわかるというものだ。
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