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彼の狙いは……。
ベイジルは眉をひそめ、不快感をあらわにした。
一刻も早く彼と別れたい。ロシュといると、簡単に自分と彼との間にできた子供を切り捨てた自分勝手なスターリーを髣髴 とさせる。
同時にすっぱいものが口の中に広がった。
これから自分はこの腹に宿った新しい命とどう向き合い、生きていけばいいのだろう。自分と赤ん坊の未来を考えただけで頭が痛い。
愛していた人に捨てられたという現実が重くのし掛かる。
胸が押し潰されそうだ。
吐き気が込み上げてくる。
ベイジルは不快感を隠すことなく、自信過剰な男から一歩後退る。
しかし、ロシュはそれを許さなかった。
ベイジルはロシュに腕を掴まれ、抵抗する暇もなく唇を塞がれてしまった。
ベイジルが驚いた隙を突いて、彼の舌が唇を割り開き、口内へと侵入を果たしてきた。
滑らかな舌がベイジルの口内を我が物顔で蹂躙する。
舌を絡め取られ、唇を吸われてしまえば、不本意ながらもくぐもった声がベイジルの唇から漏れはじめる。
――認めよう。彼はスターリー以上にテクニックがある。
気が付けば、ベイジルは自ら彼の背に腕を回し、与えられる口づけの先の行為を強請っていた。
ベイジルの唇からはどちらのものともわからない唾液が滴り落ちる。
時折、爽やかな風が吹き、木の枝枝で息づく葉がそよめく。
木々に囲まれるばかりの静かな教会の面前で口づけを交わすなんてもってのほかだ。
それなのに、ベイジルはこの行為を拒めないくらい気に入りつつあった。
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