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白昼夢。

 不用心だった自分が悪いといえばそれまでだが、これで命を落としてしまうのもまた辛く、苦しい。  これは物取りの類かそれとも殺人か。どちらにしても自分の命が危険にさらされているのは間違いない。  いや、自分だけではない。この身に宿った小さな命も、だ。  助けを求めるために声を上げようとしたのも束の間、後頭部を押さえ込まれ、悲鳴さえも上げることはおろか、肺にも空気が行き渡らない。  自分はこうして生涯を終えてしまうのだろうか。  ベイジルは身を引き千切られんばかりの激痛と、あまりの恐怖に襲われ尻込む。  深い絶望を味わっていると――。 「ベイジル、ベイジル・マーロウ。どうした? 何があった?」  ふいに声が聞こえたかと思えば同時にベッドに押さえ込まれていた身体が軽くなった。 「ベイジル、ベイジル」  自分の名を呼ぶその声は男性特有の低音で、けれどもどこか甘い。鼻にかかる声質だ。ほんの数時間前まではまったく面識さえなかったのに、今ではすっかり聞き覚えがある。  目を開ければ、赤い目をした男性がいるではないか。  なぜだろう。彼の顔を見た途端、心の内側にあった恐怖心が外に向かって出ていくのを感じた。  身体の激痛は少しずつ和らぎ、鈍い痛みへと変化していく……。 「……ロシュ?」  恐怖で声が掠れる。  彼はそう、昨夜ベイジルが引っかけた美しいロマの男性、ロシュ・サムソン。

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