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魔力の正体は?

 幸い、ほんの少しノブを回しただけで、ドアは抵抗することなく軋みを上げながら簡単に開けることができた。  (はや)る心を抑えながら、ロシュは大股で玄関を通り抜け、真っ直ぐに伸びた廊下を進む。  その先にある部屋のドアは半開きになっていて、廊下から細い肢体が見えた。 「ベイジル?」  嫌な予感を覚えながらも目的の部屋に歩を進めれば、案の定、彼は隣にあるベッドから転げ落ちたのか、カーペットの上で倒れていた。  彼の身に、何が起こったというのか。  ロシュは慌てて駆け寄り、彼を抱き起こせば、こめかみからはじんわりと汗が伝い、目尻には涙が浮かんでいる。  それを見た瞬間、闇を背負って生きてきたロシュは、けれども言い知れない闇を感じ取った。  アパートの外からも感じた魔力が、彼の皮膚にへばりついている。  これはいったいどういうことなのか。  ロシュは感じた魔力の質を探るべく、全神経をそれに集中する。  そうして判ったのは、この魔力は自分と同じブードゥ魔術の根源から生じているものだということと、自分と同じジェ・ルージュ(赤い目)の血縁関係にあったことだ。  ベイジルはいずれかのジェ・ルージュ神に恨みを買っているのか。  はたまた彼に恨みを持つ人間がブードゥ神を呼び出し、呪うように仕向けたか。

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