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アルファは気取り屋。

 すべては自分とのセックスのために……。  そうでなければたかがオメガの命ひとつ。この世界から消え去ろうとも然したる問題はない。  なにせオメガの能力は社会的に優れているアルファや一般的なベータとは違い、子供を孕むだけしか脳がない存在だから。  ロマの男は見返りを求めているだけだ。彼はベイジルの命を助けるためと装って、性欲処理をさせるつもりだ。  なぜなら、スターリー・ジギスムンドも利己的で計算高い、おためごかしに恩を売る人間だったからだ。  オメガの自分を気遣い、優しい言葉のひとつでもかけてくれたのはただ、自分との一夜を愉しむためだけだった。  高貴な性を持つアルファとはそういう人間だ。当然、ロマの彼もまた、スターリーと同様に違いない。  だって彼との出会いは最悪だった。彼はヒート状態の自分をひたすら掻き抱いたのだろう。まるでベイジルが自分の所有物であるかのように首の部分には噛み痕が残っている。  たった一夜の過ち。そこに相手を気遣う感情はない。  それに彼の服装。スーツ姿の彼はどこからどう見たって、これから子供のお守りをしようとする人間には見えない。 『体裁ばかりを気にする気取り屋』  ベイジルは少なくとも彼をひと目見た瞬間、そう思った。  それなのに……。  今になってその考えが間違っているかもしれないことに気づかされた。  それは昨日のこと。悪夢でうなされた時、真っ先に来てくれたし、何より、弱っている自分を無理矢理抱こうとはしなかった。

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