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見た目違い?
彼は一晩中、付きっきりで悲しみに暮れるベイジルを宥めてくれた。
それに彼が着ているカシミヤのスーツ。
それは今や、子供たちが垂れ流しにしているよだれや鼻水でべとべとだ。それなのに、彼は一向に子供たちを怒らない。
ベビーシッターとしての服装はどうであれ、彼は思いやりに溢れた紳士だ。
その証拠に、教会の子供たちは懐いている。
たしかシスターが言うには、子供たちはとても敏感で、大人を毛嫌いするという。
どう見てもスーツが似合う彼が子供と戯れる姿を想像できなかったベイジルだが、今は直面してよく理解できた。
もし仮に、子供たちをあやしているのがスターリーだったならばどうだろう。子供たちは懐くだろうか。
――いや、有り得ない。彼はいつだって自分の立場を気にしていた。アルファという優れた家系に生まれた彼は親に捨てられた子供をそこら辺に落ちているゴミくず同然のように思っただろうし、高級なスーツを汚されれば激怒する筈だ。
ああ、なんて自分は愚かだったのだろう。スターリーが良い父親になれる筈なんてなかったのに……。
自分以外に興味を持たない人間が、どうやって彼よりも劣るオメガのベイジルとその子供を愛することができるというのだろう。
「…………」
胃がむかつく。
吐き気がベイジルを襲った。
悲しみと孤独がベイジルを覆う中、ロシュから困惑する声が聞こえて、はっと我に返った。
そろそろ助け船を出した方がよさそうだ。
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