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膨れ上がる欲望。

 一糸も纏わないその姿で彼に包まれたい。  しばらくの間、ベイジルは子供たちがいることすらも忘れ、ただ目の前にいる美しい男性に見惚れていると、彼がふたたび口を開いた。  しかしどうも自分が思っていることと彼が話す内容が違っているようだ。 「えっ? なに?」  果たして彼は何と言ったのだろうか。  ベイジルははっとして我に返ると、慌てて尋ね返した。 「君が着ているようなそういうものを着ればいいのか?」 「ああ、うん。そう……」 (僕はいったい何を考えていたんだろう)  子供たちの前で考える事柄ではないことに、ベイジルは急に恥ずかしさをおぼえた。  ロシュから目を()らし、顔を俯ける。  すると彼はベイジルの耳もとに唇を寄せた。 「今夜も君の家に行っていいか?」  声はずっと低い。  子供たちに聞こえないような小さな声は、嗄れている。彼の吐き出される息がベイジルの耳孔に注がれた。  彼の言葉の意味を理解したベイジルの下肢にいっそうの熱が灯る。  ベイジルを魅了して止まない薄い唇には笑みが浮かんでいる。どうやら彼はベイジルが何を考えていたのかお見通しらしい。  そして彼もまた、ベイジルを欲していた。その証拠に、ルビーのような赤い目には炎が宿っている。  間違いなく、彼は今夜自分を抱くつもりだ。  それが嬉しいと思えるなんてどうかしている。もしかして薬の効き目が切れてしまったのだろうか。  ――いや、そうではない。  彼は肉体と同じく、内面も魅力的だと知ってしまったからだ。

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