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期待違い。
彼の姿を思い浮かべるそれだけで胸が高鳴り、下肢に熱が宿る。ベイジルの分身は膨らみ、固くなっていた。
間違いなく、ベイジルの身体は彼を欲っしているのが判る。
「はい」
自分はこれから彼を誘惑する。
改めてそのことを考えると、ロシュと顔を合わせるのがどうにも気恥ずかしい。
ベイジルは俯き加減で玄関のドアを開けた。
しかし目の前に立っていたのは青いズボンとジャンパー。キャップを被った、年の頃ならまだ学生だろう、青年だった。
「まいどありがとうございます。ご注文いただいたものをお届けに来ました。オルベリアピザの者です」
彼は見慣れた平たい箱を持ち、愛想笑いを浮かべている。
ベイジルは期待していた男性とは違う人が訪れたことで、ため息と共に、落胆の気配が顔に出てしまった。しかしデリバリーを頼んだのは自分だ。
いくらアルバイトとはいえ、これでは注文の品を届けてくれた青年に悪い。ベイジルは慌てて唇を閉ざし、笑みを作るとピザを受け取った。それから財布を取り出し、代金を渡したその直後だった。
「もしかして俺を誘ってます?」
「は?」
ベイジルは唐突に尋ねられ、話の内容が理解できなかった。
口をぽかんと開けて、暫くの間目の前の青年を見ていると、彼のオリーブ色の目が血走っていることに気が付いた。
これは良くない兆候だ。
なにせベイジルは発情期を迎えている。いくら薬で抑えているといっても、彼くらいの思春期真っ盛りの年齢はとても敏感で、ちょっとしたベイジルたちオメガの匂いを嗅ぎ取ってしまうのだ。
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