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襲。

 ロシュのことばかりが頭を占領していたおかげで、自分の性について頭からすっかり抜け落ちていた。  なにせ今日は、ベイジルにとって今までに考えられないほど、充実した一日を送れたのだ。無理もない。  しかし、この日常で自分の性を忘れるなんてもってのほかだ。自分は、アルファはもちろん、発情期の今はベータさえも誘惑するフェロモンを発するオメガだということを忘れていたなんて!!  致命的なミスをしてしまった。  ベイジルは警戒心を剥き出しにして、青年との距離を置くよう、一歩後退った。急いで玄関のドアを閉めにかかる。  しかし反応が出遅れた。 「貴方の身体からとてもいい匂いがする」  青年がそう口にした瞬間だった。彼は後ろを向いたベイジルに手を伸ばし、そのまま押し倒した。  青年の力は見かけよりもずっと強い。ベイジルは大きな音を立て、床に叩き付けられた。  胸を打ち付け、痛みが襲う。  呻くベイジルに、しかし青年は気遣う気配はない。  玄関のドアが閉まる音が無情にもベイジルの頭に響いた。   「入浴直後なんだ。髪、濡れてる。いい匂い。なんかすげぇ、興奮する……」 「っひ!」  べっとりとした青年の吐き出す息が気持ち悪い。ベイジルの耳孔に注がれ、嫌悪感から身震いした。  すると何を勘違いしたのか、青年はベイジルの短い悲鳴が悦こんでいるものと思ったらしい。  鼻息を荒げ、耳朶を食んだ。 「いやっ!!」  ベイジルが身動げば、青年の固くなった欲望が当たった。

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