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もう遅い?

「いいや、食事が先だ」  しかし、ロシュは唇をへの字に曲げたままだ。  ひょっとすると、彼はもう自分に興味がなくなったのかもしれない。  なにせロシュはハンサムだ。その彼を、他の連中が放って置くわけがない。  一向に性欲を晴らす気配がないベイジルに嫌気が差したのだとすれば……。  チャストロミエル教会でロシュと別れた後から空白の一時間、誰かしらを引っかけ、あるいは引っかけられて情交してきたのかもしれない。  ならばなぜ、彼がここにいるのかは判らないが、ロシュは見かけよりもずっと正義感溢れる男性だと思う。でなければ、白昼夢でうなされて泣いている時も今だって、自分に手を出さずに寄り添うだけにはなっていない筈だ。  彼は愛情溢れるアルファだ。  その彼をみすみす取り逃してしまうなんて……。  すっかり惨めになったベイジルは顔を俯けた。  すると視線の先で、彼の中心が昂ぶっているのが見えた。  ああ、彼は誰とも身体を交えていない。  そう思った時、ベイジルは嬉しくなった。  彼が自分の元にやって来たのもすべて、ベイジルと猥りがわしい行為が目的だったのだ。  けれども泣いているベイジルと性交に及ぶことができず、こうして宥めてくれている。  そして自分の欲望よりもベイジルの身体を気遣い、食事をさせようとしている。  そう思うと、ベイジルの心はあたたかになる。  やはり子供たちの見立ては正しかった。ベイジルこそ彼がアルファだというだけで毛嫌いし、警戒心を露わにしたが、子供たちは違った。

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