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狂う。

 抱かれるということはすなわち、そういうことだ。  たとえ、突っ込まれる時がどんなに苦しくとも、最後には喘いで快楽を得る。オメガはそういう穢らわしい存在だ。だからこそ、皆は自分たちオメガの性を、『性欲処理』や『孕むばかりの人種』だとそう言うのだ。  たとえ、彼がどんなに教養があって思いやりを持った男性でも、オメガに狂わされれば理性はひとたまりもないことは知っている。 『自分は暴力で解決しない』  先ほど彼はそう言った。けれどもそれは理性があればというはなしだ。理性を失い、オメガが放つ香りに狂わされた人間はすべて、欲望の支配下に置かれる。  自分は誰にも対等に扱われない。  そう実感すれば心が冷たくなっていく。胸が苦しくてたまらない。  けれどもこの行為を中断されるのは嫌だ。  今はそれ以上に抱かれたい。青年に弄られた身体は熱を帯びてしまったし、この行為を今さら拒絶するなんてできない。だったら、同じ抱かれるのならば情に溢れた男性がいい。  例えば、涎や鼻水で衣服を汚されたというたったそれだけの利己的な理由で子供たちを少しも怒鳴りつけることがない、ロシュ・サムソンのような愛のあるアルファに。  だからベイジルは悲鳴を上げそうになる唇を固く引き結び、これから酷く扱われるであろう情交に目をつむる。  オメガの自分にはこれが正しい抱かれ方なのだと言い聞かせて――。  ロシュの口から獣じみた呻り声を聞いた。  目は血走り、鼻息も荒い。  彼のこれはオメガに狂わされている証拠だ。

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