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死神。

 疑問に思うものの、この場にひとりきりではないことに安堵し、やっとの事で立ち上がる。  けれどもそれは間違いだった。  その事に気がついたのは、目の前にいる人影にもう少し近づいた時だった。  彼は大鎌を持っていたのだ。  いや、それが男性なのか女性なのか。ほっそりとしたその身体は漆黒のローブを身に纏い、深いフードを被っていて性別は判らない。それでも身長はベイジルよりもずっと高い。  手には鋭い大鎌を持ち、闇色のローブに身を包む、『それ』の姿はまるで、ホラー映画に出てくる死神そのものだ。  その死神は今にもベイジルの首を刎ねようとしている。大鎌をベイジルに向けて大きく振り上げた。  ベイジルは恐怖で震える身体をなんとか引き摺り、すんでの所で大鎌を避けた。  それでも容赦なく幾度にも渡って大鎌を振り下ろされ、ベイジルはその度に転げるようにして逃げ惑う。  ただでさえ、度重なる疲労で身体が思うように動かないのに、それに加えて殺されるかもしれない恐怖が動きを鈍くさせる。おかげでベイジルが着ていたシャツが鋭いその切っ先の餌食になった。  ぱっくりと開いたそのシャツの次は自分の身だ。  腰が立たない。耳を劈く悲鳴を上げる。  今や周囲にはベイジルの悲鳴と荒い呼吸ばかりが木霊していた。  胃から込み上げてくる酸っぱいものが口内にまで上がってくる。  逃げるのを止めてしまえば自分はたちまち殺されてしまう。

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