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despair。
ベイジルは大鎌を振り下ろされるそのたびに死の淵へと誘う死神から逃れるべく、ただただ走った。
広いガレージ内はコンクリートが押し上げたり、ひびが入っていたりとかなり足場が不安定だ。何度も転げそうになる。
対する死神はとても軽快な足取りでベイジルに狙いを定めて襲い来る。
大鎌を持ったおぞましいそれの位置を確認しながら、ベイジルは逃げることしかできない。
走っても走っても、まったく終わりが見えない廃墟は、いったいどこまで繋がっているのだろう。
車で突っ込めたくらいなのだから、そろそろ出口が見えてもいい頃合いなのに、なぜか一向に出口が見当たらない。
依然として足場の悪い地面が続くばかりだ。
冷たいじっとりとした汗が額から顎に伝い、流れ落ちる。
ベイジルは震える身体に鞭を打ち、それでもこの場から逃げられるという望みを捨てずに走る。
何度も何度も、相手と自分との距離を確認しながら……。
まだ大丈夫、まだ追い着かれない。
ベイジルは自分に言い聞かせ、なんとか足を動かす。
しかしそれがいけなかった。前方を確認せずに逃げていたベイジルは、剥き出しになっている骨組みに気づかず、自らがそこに追突するようにして小さな命を宿した腹部に強く打ちつけた。
恐ろしいほどの激痛がベイジルを襲う。
絶望を宿す悲鳴と苦痛。その声が周囲一帯を覆う。自らが発した声がさらなる恐怖となってベイジルを襲った。
死の恐怖と激痛。その二つがベイジルを蝕む。
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