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he is HERO。

「ロ、シュ……」  激痛のあまり声が掠れて上手く出せない。それでも彼はベイジルの声を聞き分けた。 「ベイジル、腹を強打したのか?」  腹部を抱えて蹲るベイジルの姿を見た彼は、囁くようにそっと尋ねた。  その声はとても小さく、ベイジルへの労りを含んでいた。  ベイジルは声が出せない代わりに呻き声を上げる。すると激痛を訴えるベイジルの腹部に彼の骨張った手が触れた。  撫でられたその手から、じんわりとあたたかな何かが伝わってくる。恐怖は少しずつ消え去り、パニックに陥っていたその頭は、おかげでほんの少し平常心を取り戻せた。  労りの色を見せるロシュの姿に、息を乱しているベイジルは大きく唾を飲み込んだ。  額に薄い唇が乗る。  彼はパニックに陥っているベイジルをどうにかして宥めてくれようとしているらしい。 「きっと大丈夫だ、待っていろ。すぐに終わらせる」  彼は人間だ。『それ』はもしかすると本当に恐ろしい『死神』かもしれない。実は深く被っているあのフードの下は骸骨で、おどろおどろしい姿をしている悪魔だとしたならば――。  そんな相手に人間のロシュが太刀打ちできる筈がない。  それなのになぜだろう。ロシュならなんとかしてもらえると思う自分がいるのは……。 (ロシュ、ロシュ……)  ベイジルの思考は防衛反応が働いたのか、もう何も考えられなくなった。  ロシュに逃げるよう、一刻も早く伝えなければ。  そう思うのに、ベイジルの意図とは反して鉛のように重たい瞼がゆっくりと下りていく。  そうしてとうとう、意識を手放してしまった。

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