127 / 158

目覚め。

 †  瞼の裏に光輝く大きな球が現れる。光輝く球体を意識すればその分、やがて巨大になり、眩しいほどの光を放つ。それはとても優しく、力強いものだった。強烈でありながら優しい光を見ていると、胸に熱いものが込み上げてくる。それはやがて涙となり、頬を伝った。  ベイジルは暫くの間、瞼の裏に光輝くそれに焦点を合わせる。すると涙溢れる目尻に何かが触れた。それは細くて弾力のある何かだった。  ベイジルの目尻に触れたその何かは、目の前に現れる光に雰囲気が似ている。  これはいったい何だろう。  ベイジルはそっと目を開けた。  すると次に現れたのはシングルベッドに白のカーテン。ところどころ剥がれ落ちている塗装。今ではすっかり見慣れた光景が徐々に形を成していく。 「ここ、は……?」  そこはアパートの一角。自分が借りている部屋だ。 「気が付いたのか」  ベイジルにかけた声はずっと低い。隣にはロマの男性がいた。  彼は心配そうな表情で自分を見下ろしている。 「僕はどうしてここに……」  それになぜ、ベッドで横になっているのだろうか。  ベイジルは目を瞬かせ、赤い目をしたハンサムな彼を見つめた。  尋ねたのはおかしなことに、記憶の一部が抜け落ちているような気がするからだ。  今日もチャストロミエル教会でベビーシッターをしていたところまでは覚えている。 (それからどうしたんだっけ?)

ともだちにシェアしよう!