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混乱する思考。

 ――そうだ。粉ミルクが切れるからと、買い出しに行った。その帰り道、車は何度か暴走し、事故を起こした。いや、それだけではない。ベイジルが何度もブレーキを踏んでもひとりでに走り続け、辿り着いた先はまるで樹海のような深い木々に囲まれた、古ぼけたアパートのガレージだった。そして大きな鎌を持ち、闇色のフードを深く被った死神のような格好をした人が襲ってきて、逃げる途中、コンクリートから突出している鉄筋が腹部を突き刺して、あまりの激痛に転げ回っているところでロシュが現れたのだ。  それから自分はどうなったのだろう。 (そうだ。お腹の赤ちゃんはっ?)  ベイジルはベッドの上で身体を丸め込み、腹を抱える。  まさか赤ん坊の命を落としてしまったのだろうか。  ベイジルの身体に寒気が襲う。いくら襲われたからとはいえ、凶悪犯から逃げる途中、自分の不注意で小さな命を消し去ってしまったと思うと震えが止まらない。  赤ん坊を殺したのは刃物を持った人間でも、子供を下ろせと言ったスターリーでもない。ベイジル自身なのだ。 (ああ、自分はなんということをしでかしてしまったのだろう)  ベイジルはいっそう身体を丸め込み、ベッドの中で震え続ける。 「ベイジル? どこか痛むのか?」  するとロシュはベイジルの異変に気が付いたらしい。腕を伸ばし、小刻みに震える背中を擦った。  背中を擦るその手の感触が、パニックを起こしかけていたベイジルに落ち着きを取り戻させてくれる。  ロシュに触れられた箇所からあたたかな熱が生まれ、恐怖ですっかり冷たくなっている身体に広がっていく。 「痛みは……ない」

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