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現実と非現実。

 そこでほんの少し普段の平静を取り戻したベイジルは、ロシュの問いに耳を傾けた。  あらためて腹部に触れてみると、痛みを感じなかった。  もし、ベイジルが流産したとすれば、腹部に痛みがあってもいい筈だ。  けれども今はどうだろう。見たところ不正出血もない。流産したような形跡が一向に見受けられない。 「…………」  だとすると、あれらはすべて夢だったのだろうか。  大体、大鎌を振り回すなんて人間ができる芸当ではないし、車が勝手に動くのもおかしい。現実のように思えた出来事はすべて非現実的だ。 「……夢だった?」  果たして自分が体験したと思っていたあれは、本当に夢だったのだろうか。 「ロシュ、僕ね、おかしな夢を見たんだ。シスターに頼まれてデパートまで子供たちのミルクを買いに行った帰り道、車の運転が利かなくなったんだ。辿り着いた先が見たことのない古びたマンションで、そこに黒いフードを被った人がやって来て、殺されそうになる現実めいた夢。そんなこと、現実には有り得ないのにね」  では、あれらが夢だったとすればなぜ、自分は今ベッドに横たわっているのだろう。  それにいくら現実離れしている内容でも、夢にしては現実味がありすぎやしないだろうか。鉄筋が腹部に突き刺さったあの時に味わった身を切り裂くような恐ろしい激痛なんて現実そのものだった。

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