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ベイジルの秘密。

「ベイジル? 君はいったい何をしているんだ」  自己嫌悪に陥り、慌てふためくベイジルに、ロシュは尋ねた。 「教会に行く」 「ちょっと待て!」  ロシュは腕を伸ばし、外出しようとしているベイジルを止めにかかる。 「まだだめだ。君は本調子じゃない」 「大丈夫、もうすっかりよくなったから」  ベイジルのそれはけっしてやせ我慢ではない。  実際、今朝方よりもずっと身体は軽快に動いた。だからベイジルはロシュに向き直り、にっこりと微笑んでみせた。身支度をしながら明るい口調でロシュに話せば、しかし彼は静かに首を振った。 「いいや、君はもっと安静にするべきだ」  彼の骨張った大きな手が伸びてくる。 「でも! 教会に行かないと!!」  ベイジルはロシュが止めるのも聞かず、差し出されたその手を振り解いた。 「いいかい? 君は丸三日も気を失っていたんだ。君の体調がすっかり良くなるまで俺も傍に居る。それはシスターも了承してくれている。医師だって安静にするようにと言っていた」 「三日も?」  眠っていたのは片手で数えられるだけの時間だとばかり思っていたベイジルは、漠然と立ち尽くす。  そこでロシュはようやく大人しくなったベイジルを横抱きにすると、ふたたびベッドの上へと寝かせた。 「ただでさえ重労働をしていたのに、今は君一人の身体じゃないんだ。君はとても疲れているんだよ、ベイジル」  労りをみせるその声はとても穏やかなものだった。けれどもベイジルの心中は穏やかになれず、それどころかロシュの話を聞いてよりパニックに陥ってしまった。

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