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依-2 ワガママな付き合い
昼休みに中庭のベンチで並んで座り昼飯を食べていた。
いつも通りだった。いつものように夏道が一人で喋っているのを聞いていた。
「――だからさ、付き合ってくれよ」
「……え? どこに…?」
脈絡が無いわけではなく、俺が内容をちゃんと聞いていなかった。
「だあかあらあー」
俺と向き合うように座り直して力説し始めた。
「俺ら最近、全然一緒に遊べてないじゃん? 主に俺の部活のせいでさ。一緒に居るつったら、たまに昼飯食うくらいでさ」
「うん」
「お前も他の奴と一緒にいたりさ。てかこの前、女子に告られてたろ。付き合ってんの?」
「付き合ってないよ」
「そっか……。とにかく、そんな感じでさ、一緒に遊べなくなっただろ? それが嫌でさ」
こいつの喋り方は素直すぎて子供っぽい。体格良く男らしく成長してるのに、喋り方は変わらない。そのギャップが可愛らしくて可笑しくて、思わず笑いそうになる。それをこらえながら、ポーカーフェイスで聞いていた。
「だから、付き合って立場上の恋人同士になれば、一緒に遊べる時間増えるかなと思ったんだよ」
これは、聞きながら食事を続けていた俺のせいだが、箸で掴んでいたおかずを落としてしまった。
恋人同士?
そういう意味の「付き合ってくれよ」なのか……?
夏道はナイスアイデアと言わんばかりに爛々とした表情で人差し指を立てている。
地面に落ちたおかずを拾う。
何と言えばいいんだろう。
「なんで、それで付き合うことになるの」
「付き合ったら一緒に居たりデートしたりっていう二人の時間が出来るだろ。その要領で」
「要領でって……」
何と言えばいいんだろう。
聞いてもいいんだろうか。ずっと思っていたことを。
でもきっと、いや、こいつは絶対そう思っていない。本当に一緒に遊びたいからというだけだろう。他意のないただの提案だろう。
一緒にいたいなら、お前の為なら時間くらい空けるのに。それなのにわざわざ付き合うのか。
「……夏道は付き合ってる人いないの?」
「いない!」
だから問題ないと言ってドヤ顔をされた。
「まぁ……、夏道がそうしたいなら」
「やったー! じゃあよろしくな! 依 !」
両手を上げて喜ばれた。軽い。
「さっそく週末遊びに行こうぜ! バッティングセンター!」
「うん」
これ、一緒に遊ぶ約束をしただけでは。いつも通りじゃないか。付き合う意味はあるのか。
でも、俺の気持ちなんか知らなくていいか。一緒に居られるなら。
隣ではしゃぐ夏道が面白くて、笑ってしまった。
「お前、ほんとワガママな」
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