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依-10 罰と告白

「好きだよ」  俺が自分勝手だったんだ。どうにも出来ない気持ちの所為にして。  夏道の寂しそうな顔を見たくなかった。そんな顔をさせてしまった自分にムカついた。 「嫌いとか一度も思った事ない。あの事も、ただ恥ずかしかっただけ。夏道は何も悪くないよ」  本当の気持ちを口に出した。 「ごめん、夏道。俺、素っ気無い態度取ってたつもりも無いんだ。ごめん」 「……」  夏道は真っ直ぐ俺を見た。まだ少しバツが悪そうだけど。  俺の顔は今、どんなだ。  でも隠さないで、少し高い位置にある夏道の頭をポンと撫でた。 「態度が改まるかは分からないけど、ちゃんと好きだから。だからもうそんな顔しないで」 「……うん」  やっとそう答えてくれると、体をゆっくりとこちらに傾けて、俺の首元に顔をうずめてきた。 「俺、お前に嫌われるのだけは、嫌だ……」 「うん」  少しの間そのままだった。首元がこそばゆいけど我慢した。両腕を体に巻きつけてきたかと思うと、そのまま抱きしめられた。 「っ……」  黙ったまま頭を擦り付けてくる。  これも……我慢した方がいいのか……?  でかい生き物に捕まった気分だ。怖い。でも……。 「めっちゃいい匂いする」 「……まぁ……風呂入ったし……。夏道も入れば」 「うん」  素直に離れた。気持ちは治まったのかな。  着替えを持ってのそのそと出て行く。ドアが閉まるのと同時に床に突っ伏した。  抱きしめられた。  じゃなくて。やはりこれは罰だったんだ。俺はずっと悪い事をしていたんだ。  反省します。ごめんなさい……。  ……好きと、言ってしまった。あいつはきっと、友愛の意味で受け取っただろう。  この気持ちをどうしたらいいのかは分からないままだ。 「本当の事言ったら、俺がお前に嫌われるんじゃないのか……」 「だ」 「……なにが」 「お前の今の状態。ウケる」  戻ってきた夏道は、頭にタオルをかけたまま見下ろしていた。「ごめん寝」って、猫がやるやつか。俺は起き上がって、テーブルの上の物を片付ける。 「寝よう。来客用の布団持ってくる」 「置いてある場所変わってないだろ? 俺がやるよ」  ベッドの隣に布団を敷いて並んで寝る。見下ろすと夏道の顔が見える。  ……もう寝てる。寝付くの早過ぎるだろ。  俺はそのまま寝顔を眺めた。 「夏道」  呼んでも起きないのは知っている。自分から起きない限り、起こすのはまず無理だから。 「……なつみ……」  こんなに近くにいるのに。  胸が、苦しくなった。

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