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夏道-5 曇り後快晴

元々、この時期は試合と練習に没頭している。テストの追試を受けない程度に勉強はしてるけど、誰かとどこかに遊びに行ったりとかはほとんどない。野球馬鹿と言われるのも否定しない。 付き合っている関係だからこそ、空いた時間に遠慮なく会いに行けるんだ。結構いい提案だったろ? そりゃ、恋人みたいなことはしてないけどさ。だって俺等は……、そんなんじゃないし。 「どうしたの?」 「え?」 俯いてぼーっとしていた俺の顔を覗き込んでいた。 練習が終わって後は家に帰るだけという時間帯で、公園で待ち合わせして会いに来ている。 俺は、この前のモヤモヤがずっとあって上の空で、今日の練習も集中しきれなくて監督に怒られた。大事な時期なのに。 「……もう帰れば?」 またぼーっとしてた。依は呆れた様な声でそう言ったけど、心配そうな顔をしている。不満気に「やだ」と即答すると、今度こそ呆れた顔になった。 「わざわざこんな時間に会うなんて、そこまでする必要ないだろ。夏は特に一緒に……遊べないのは毎年のことだろう」 コイツもよく分かっている。それでも俺は……。 「会いたかったから」 頭の中は複雑だけど、出てくる言葉は単純で素直だった。素直すぎかな。 「あ、今日さマネージャーが、はちみつレモン?だっけ、それ作って持って来たんだ。ほんとにあんのな。すげぇウマかったよ」 「へぇ」 「今度食わせてやるよ。作り方教えてもらった」 「え、夏道が作るの? ていうか普通逆じゃない?」 「あはっバカにすんなよ、自炊してるから作れるさ。きっと」 「きっと、かよ」 二人で笑った。 やっぱりコイツと一緒にいると楽しい。そして落ち着く。 「俺、やっぱお前のこと好きだわ」 考えていた事の結論をそのまま投げた。 コイツは途端に笑顔を曇らせて、俺の投げたボールが頭にポカンと当たると、転がっていくそれを見るように下を向いた。 楽しくなった空気が冷めた感じがした。思えば、「好き」という言葉なんか使った事がなかった。好きなのは大前提だから。 でも、前に依が言ってくれたっけ。いざ相手に言ってみると小っ恥ずかしいんだな。俺もポツンと落ちてるボールを見て、居た堪れず首をかく。そうしてると、依はそれを拾い上げるように顔を上げて微笑った。 「うん」 少し、寂しそうな目をしていた。それでも真っ直ぐ俺を見つめた。 思わずその顔に触れて、目尻を親指で撫でる。 「依」 表情が消えるその顔を寄せた。 顔同士が付く寸前でズラして、抱きしめた。 うなじ辺りに手を回して、その首に鼻をこする。ピクンと仰け反る体を逃さないように腕に力を入れる。 依の匂いがする。 「依……。………またな」 静かにそう言ってゆっくり離れた。返事は返ってこない。 こっちを見つつも固まってすごく照れていた。ハッと気づいて両腕で顔を隠してて、思わず吹き出して笑った。 「ほんとかわいいよな、お前」 俺は依が好きだ。 それは野球に対する気持ちと同じように揺るぎない。 モヤモヤする理由は何処にもない。 今日は快晴。 他の生徒たちと応援しに来てくれているアイツの顔を見つけた。アイツが見てくれてると嬉しくなる。 俺は踵を返して仲間達と整列した。 試合が始まる。

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