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依-14 夏の結果

 只今絶賛夏バテ中。  試合の応援にはなるべく行っていて、甲子園の時期が終わる頃、俺は限界を迎えて最後の方は行けなくなる。もはや恒例行事。  勉強ばかりしてインドア派である俺には厳しい季節ではある。でも、一番好きな季節だ。  リビングのソファーに寝転びながら甲子園のテレビ中継を観ていたけど、やはり物足りなかった。付けてはみてもすぐに消してしまう。夏道をもっと映してくれないかな。  自室に戻って少し眠ると体は楽になった。テーブルに置いていたコップ一杯のお茶を一気に飲むと気分もスッキリする。  ふと携帯が鳴って確認すると、夏道からだった。 「大丈夫か?」 「……うん。そっちは?」 「……三位」 「……そっか」  開口一番は俺の心配で、その次に結果を言う。順位は、本当は凄いのにこいつは悔しそうに呟いた。過去一位になった時はすごく喜んでいて、俺も純粋におめでとうと言えたけど、不満げで悔しそうな声を聞いてしまうと言いづらい。  ……でも、この前正直に好きと言えたし、その気持ちにあやかって今年は素直に聞いてみることにした。 「……おめでとうって言っていい?」 「え、うん……」  少し驚いたようだけど、テンションは低いままだった。 「おめでとう」  言えなかった時の分も込めてゆっくりと言った。  やはり直接言えば良かっただろうかと言った後すぐ後悔した。ちゃんと伝わったか、夏道の顔が見たい。 「おう」  声ははっきりとしていた。  あぁ、夏道は今どんな顔をしているんだろう。  こいつは結果が不満だと今まで以上に頑張って練習する。真っ直ぐ自分の道を行くだろう。その姿を見ているのが……好きなんだ。応援したいんだ。たった一言に込めた、俺の気持ちは伝わったかな。  その後は詳しい話を聞かせてくれた。試合以外にも、俺と会わない間何があったとか、こんな事があって面白かったとか楽しかったとか、色々話していた。  再び横になって携帯を耳に当てる。夏道の声は落ち着く。  気がつくと眠っていた。……電話どうしたっけ。  重たい瞼を開けると、夏道が目の前にいた。 ん? 「はっ!? なんでっ……」  急に起き上がって顔を離すと眩暈がして、体勢を崩した俺の体を支えてくれた。ベッドに座り直して少し横にずれたが、夏道は隣に座らず目の前から動かない。 「大丈夫か?」 「う、うん……、どうも」 「電話中、お前寝ただろ。いつもの事だけど。とりあえず会いたかったから来た」 「あ、そう……」  こいつは何でこんなにも素直に言えるのか、時々羨ましく感じる。 「あ」 「あ?」 「夏道」 「あぁ」 「おめでとう」  もう一度面と向かって言いたかった。思い出すのと同時で、つい笑いながら言った。  片方の眉を上げて不思議そうにした表情は、フッと真顔になって、やがて面映げに笑った。 「おう!」  俺が可笑しいのか、素直に喜んでくれたのか分からないけど、その顔を見たかったんだ。  もうすぐ夏も終わる。

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