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依-18 夏道の服と部屋
晩飯は夏道が作ってくれた。ラーメンサラダだ。有り合わせでどうとでもなるから楽なメニューだとこいつは言う。俺は箸やコップを用意してリビングのテーブルに並べた。
夏道の家は物が多くまさに一般家庭の内装といった感じで、俺は来るたび楽しんでいた。居間のテレビで、うちには無いゲームも一緒にしていた。それに、当然と言うべきか、野球に関する物がよく目に入る。本棚やテレビの側にその類いの雑誌や本が雑に積まれている。しばらく来ていなかったけど、物が増えたくらいでほとんど変わっていなかった。
「食うぞー」
部屋を彷徨いて眺めていたら呼ばれたので席に着いた。
出来上がりの見た目も良く味も美味しかった。夏道は料理が上手だ。俺は素っ気ない簡単なものしか作れないから羨ましい。
「お前美味そうに食うよな」
小馬鹿にされて少しムッとしたが、口の中がいっぱいだったので無視した。不意に手が伸びてきて思わず自分の口を覆うと、また一つ笑われた。
「もうねぇよ。そこのティッシュ使え」
……露骨すぎたか。
食器の音だけが響いている。今日俺が来なかったらこいつは一人で食べていたのかと、なんとなく思った。目線を起こして見ると、もう食べ終わっていた。俺の普通量の倍はあったように見えたが……早いな。
「風呂どうする?」
「遠慮しとく」
「じゃあ俺入ってくるわ。食い終わったら流し台のとこに置いといて」
「うん」
脱衣所に着くまでに次々服を脱いでいく背中をじっくり見つめてしまった。裸を見たのも久々な気がする……。
「狭っ」
「分かる」
床面積がほぼ布団二枚分だった。夏道がどっかりとそこへ座り込むとさらに狭く感じる。
「お姉さんと一緒に寝てるんだよな……」
「いや、姉貴は寝る時は親の部屋行くようになった。邪魔とか言われたわ」
「だろうな」
「おい」
流石に俺までそちらへ行ったら駄目なのは分かるけど、……この中で一緒に寝るのか。
掛け布団を頭まで被ってみたものの、存在は近くに感じたままだ。
「それ暑くね?」
「……暑い」
かといって遮るものが無いと色んな意味で不味い。布団は腹までかけて背を向けて横になった。
唯一の救いは奴の寝入るのが早い事。そのままじっと耐えて、寝息が聞こえてくると思い切り脱力した。ゆっくりと向きを変えて夏道の寝顔を見つめる。
夏道の服を来て、夏道の部屋で、夏道の布団で、夏道と並んで寝ている。
自分の体を抱きかかえて、じわじわ込み上げてくる気持ちを抑えた。
此処に居たい様な、今すぐ飛び出したい様な。それでも体は動かず正直だ。
腰に腕が触れて引き寄せられて、足を絡められた。
ほら、もう、此れだもの。抱き枕にされるもの。色々通り越して呆れてくる。俺の身は熱くなっているはずなのに、こいつは抱きしめたままよく眠っている。
何度、俺も腕を回してみたいと思った事か。
胸の中に顔をうずめて目だけ瞑った。
安定した寝息と鼓動に、熱を感じる。
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